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危険なチラシの裏

とあるアレなオトナが、適当にその日のアレやコレや書きなぐったり書きなぐらなかったりするようなアレ。よいこはこんなぶろぐみてないでさっさとねようね!(´^∀゚`)

日本クソ昔話 「桃でしょ。」

むか~し、むかしの事じゃった。

 ある所に、おじいさんとおばあさんが基本に忠実におったそうな。
おじいさんとおばあさんは仲睦まじかったが、子供はおらんかった。
というのもおじいさんがクラインフェルター症候群により男性不妊症だったためこの歳までおらんかった。必要ない情報かもしれぬが決してセックスレスだった訳ではなかったのじゃ。
そんなこんなでこの歳まで二人してせっせと働き、決して裕福ではないが健康的でささやかながらにも幸せに暮らしてきたそうな。
そして、いつものように。おじいさんは山へ芝刈りに、
おばあさんは川に洗濯に行くと見せかけて近所のパチンコ屋で年金を溶かしていたそうじゃ。
芝刈りというパッと見割と謎なジョブで汗水垂らし一生懸命働いていたおじいさんが、昼休憩と山の川原まで来た時の事じゃった。

「ふぅ、今日も芝刈り楽しかったな。早く帰って洗濯しなければ」

 清流を眺めながら自作のクソデカおにぎりをもくもくと食べておると、川の下流からなにやらとんでもないモーター音と水を切る爆音が聞こえてきおった。見ると水しぶきを上げながら、モーターボートのラジコンめいた大きさの「何か」がそれも多数、最高速度40.7ノットにもなろうかという高速で川をのぼってきおったのじゃ。

「おや、あれは桃の川登り……M-ZEROじゃないか」

 おじいさんはもうそんな季節か。と水しぶきを被らぬよう自らに水耐性符術(アクアレジストエンチャント)をかけました。
毎年桃のセックになるっスと桃が互いのナワバリを競い合い、レースにより勝敗を決めるのじゃった。このレース…通称「M-ZERO」が妨害、工作、買収、攻撃、罵声、悪口、誹謗中傷、妬み、やっかみなど何でもありの情け無用のレースで、最後まで勝った桃がその年の桃の自治権を握るのではないかと地元では噂されておったそうな。
Kaboom!桃の一つが爆発し炎を上げた。桃は武装である12.7mm連装桃種砲を互いに斉射しながらそれを回避し、直撃を避けつつ右へ左へ舵を切りながら過酷なレースを行うが当然のように破壊され果肉や桃の天然ウォーター水を飛び散らせるもの…桃も少なくはなかったのじゃ。
大破した桃が操舵不能のまま並走していた別の桃に突っ込むと、追突された桃は懸命に桃バリアを展開しつつ川の中央に戻ろうとするもとうとう座礁し、陸地に乗り上げる。そしてそれを見ていたおじいさんの方向に地を削り転がり、2つの桃は丁度おじいさんの手前で止まったのじゃ。
さらに乗り上げる原因にもなった大破した桃が果汁100%を飛び散らせ爆発四散する。その衝撃で座礁させられた方の桃の、桃バリアが一瞬剥がれたのをおじいさんは見逃さなかった。しめた。生桃など滅多に手に入るものではない。
すかさず芝刈り用の道具である麻痺弾(パラライズバレット)を素早く叩き込む。獲物の外部に一切の損傷を与えず神経に直接強烈な麻酔効果を与え、インド象も二秒で気絶するおじいさんの秘蔵の符術道具(エンチャントアーティファクト)の一つじゃった。桃はすぐさま桃バリアを貼り直し、主砲をおじいさんに向け怒号にも聞こえる電子音を発しながら応戦したが、即効性の麻酔により精度が落ちた砲撃などおじいさんにはかすりもしない。張り直したバリアも隙だらけで、二発目の麻痺弾(パラライズバレット)を打ち込むと桃はぱたりと倒れ動かなくなったそうな。

「やったぜ。」

 普段ならレース中の桃など捕らえようと近づこうものなら全ての桃から苛烈な抵抗に合い集中砲火、労力の割にあわない狩りになるもので、さすがのおじいさんといえども無事ではすまないものじゃが、今回ばかりは天からお塩。運がよかったに違いねぇ。
バスケットボールのような大きさの桃を拾い上げると、きめ細かい産毛で覆われ、それでいてしっとりとしておった。あからさまに柔らかく、それでいて葉っぱがスクリューの役割をしているのか、しなやかながらも鋭く、切断耐性が無ければ触れるだけでミスリル合金すらも貫くほどの業物であろうと確信する。そして麻酔がかかってなお本体を守る、しかし弱まった桃バリアが柔く本体を包んでおった。
これほど状態のいい桃など都でも見たことがない。おじいさんはいい土産が出来たと弾力の良い桃をえっちらおっちらと日本代表のようにドリブルしながら帰ったそうな。

 一方おばあさんは四万円スって、腹いせにトイレットペーパーを店のトイレに詰まらせて帰ってきたそうな。

 その夜。
芝刈り中に狩ったトラとヒグマの肉を使ったデス鍋をおばあさんに振舞い、おじいさんは入れた獲物が無抵抗になる付術(ムテイコウエンチャント)が施された竹籠に入った桃を見せながら昼のことを話したそうな。

「所で、川でこんなものが捕れたぞ」
「おやまぁこら立派な桃だこと、まるでじいさんのみたいでねぇか…」

 おじいさんはおばあさんの微妙な下ネタをスルーしながら、話を続けたのじゃ。

「M-ZERO中のが運良く転がってきてな。状態は生け捕りそのものだ。しかし麻痺弾を二発も打ち込んだからまだ麻酔が残ってる、明日食わないか」
「そうじゃなそうじゃな」

 しかしおばあさんは食い意地がはっておった。皆が寝静まった夜、流しへ行きこっそりと入れた獲物が無抵抗になる付術(ムテイコウエンチャント)が施された竹籠を開けて桃を取り出したのじゃ。

「じいさんには悪いが半分だけでも先に食べたくてのぅ」

 おばあさんは口ではこう言っているものの、全部食べる気マンマンじゃった。これほど立派でしかも新鮮な桃、絶品に違いない。はやる気持ちとおじいさんには内緒で食べる背徳感で胸がいっぱいになりながら、おばあさんは包丁『血飛沫』を取り出し桃に当てた。
その時のことじゃった。何やら不思議で中性的な声が響きおった。

『待ってください。私はMomo-Daro893桃源後期型、識別ID19194545…あなた方の言葉で言うなれば「桃」です。目の前の桃です。おばあさん、私は今あなたの心に直接話しかけています』
「むぅ、なんじゃ面妖な」

 よく見なくとも桃が淡くピンクパール色に光り輝き、おばあさんに聞こえる言葉を喋るかのように発光しておった。桃は普段から怒号にも似た「何か」を発しながらレースしているが、標準語をかいせるとは思わなかったものじゃ。

『私にはM-ZEROで勝利しなければならない理由があります。その為にこの地で果てる訳にはいきません』
「そうかそうかそれは残念じゃったのう」
『ま、待ってください、刃物を降ろして。斬らないでください。そ、そうだ。叶えます。あなたの言うこと一つだけ叶えますから…斬らないで下さい』
「ん?」

 包丁をぴたりと止め、おばあさんはクッソ汚い野獣の眼光で桃を見つめたそうな。

「今何でもするって言ったかの?」
『そうです、あなたの願い事…一つだけですが可能な限り叶えますので、どうか「切断(それ)」だけは…』
「世界征服」
『無理です』

 お互いに即答じゃった。そして少しの時間が空いた後、

「ジャパニーズアイドルによる逆ハーレムキングダム」
『それも無理です。…待って!刃物止めて下さい。さっきから規模が大きすぎます。もうちょっと個人的な雰囲気…例えばあなた単体に及ぼす程度の事柄なら力になれると思います』

 おばあさんは考えた。このくそったれでしみったれな桃の言うには大した規模でない願い事を叶える代わりに助けてほしいとの事らしいのじゃが、おばあさん的には振った男が最後に「一回だけ!先っちょだけでいいから!」並の必死さと胡散臭さを感じた上に、正直願い事と言ってもおじいさんがいればそんなに願い事はなかった。

「一つだけ、か」
『はい。今の私に残されたマナ……力では一つだけです』
「ならワシを若くしておくれ」
『それなら可能です』
「マジ?」
『マジです』

 おばあさんは桃の妄言なぞ一ミクロンたりとも信用してなかったが、付き合ってやる事にした。デザートの前の軽い余興であると思ったからじゃ。

『では今からあなたの肉体を若返らせます』

 おばあさんの体が桃色の光に包まれたかと思うと、あっという間におばあさんではなくなったのじゃった。時が逆行するかのように、シワだらけの肌がハリのある肌へ、曲がった背や腰はスッキリと伸び、乳房や臀部が強調され、醜悪な老婆の姿は若き頃の妖艶な美女の姿へ戻っていった。

「おお、体が若く…若っ……?」

 そしてそこでは止まらず、体はどんどん小さくなっていき…ある一定の所で止まったそうな。

「若くなりすぎじゃろ。これでは童子じゃ」

 なんとおばあさんは八やそこらの童子の姿に戻っておった。元々はべっぴんだった為、栗のような艶やかな色の髪に、控えめながらも既に主張し始めてる成長途中の体、そしてまるで美しく掘り起こした人形のような、凛とした顔立ちの風貌ではあった。

『特に年齢は指定されておりませんでしたので』
「今すぐ二十くらい…いや十八くらいにせんかボケ桃が、これではロリババアではないか」
『私の趣味です』
「お前の趣味など聞いとらんわ、もう一度やるのじゃ」
『無理ですマ…力を使い切りました。そして約束は果たされました。では私はこr』
「イヤーッ!」
『ババアーッ!』

 ロリババアは包丁を振り下ろした。哀れ桃は一刀両断!

『アイエエエエ!な、ナンデ?カットナンデ!?』
「ここまで若かったらじいさんが喜ばんではないか、じいさんにロリ趣味はないのじゃ」

 勢い良くカットされ転がり落ちた桃に、ロリババアは切り落とした桃の半身をもしゃりながらにじり寄った。

「ほう、本体はそっちなのか。ならそっちも切り落としてじいさんに食わせ…むっ?」

 ぐらりと、ロリババアの世界が歪んだ。麻酔だ。麻酔の効果だ。おじいさんが言ったとおり、桃に打ち込んだ麻酔がまだ残っておった。そもそも桃が大人しかったのもその影響じゃった。
天地がひっくり返り、ロリババアはその場で昏倒してしまったのじゃ。

『アイエエ…エッ?気絶した…?チッ、このクソロリガキ!マナを消費させた挙句切り落としやがって!しかも神経カットする前にチクショウ痛ってぇ…このクソッ、ぶっ殺…いやまて、逃げる。逃げるのが先か。どうやって…クソッ!』

 体が欠如した今、力を消耗するのは得策ではない。桃はそう悟ったのじゃ。



 そして、翌朝。おじいさんが起きたらそばにおばあさんはおらんかった。

「おや、ばあさんや?」

 珍しい、朝餉でも用意してるのか。もしそんな事をしているなら非常に珍しい。SSR並の確率。そう思い流しに向かった所、見知らぬ童子が倒れてるのを見たのじゃった。
童子…それも髪が淫乱ピ…いや、桃色の、えらいめんこい人形のような童子じゃった。陶器のように白く透き通った肌に、濃い緑色の着物を着ておった。

「な、どうしてこんな所に童子が?それにこの異邦人のような髪の色…」
「う、うーん」
「おぉ、気づきおったか。おい、おい」
「こ、クォクォア…?」
「ここは……ちょっとした集落の、わしの家。お前さんは誰じゃ?どこから来なすった?」
「どこから……?ワシ……ワシは」

「ワシは、誰じゃ」


(ここで悲劇系ギャルゲーOPが流れるのじゃった)


 古風な喋り方をする桃髪の童子は何も思い出せず、困惑するばかり。名前を聞いてもわからない。お家を聞いてもわからない。
おじいさんもおじいさんでおばあさんが行方不明なものだから正直それどころではないのじゃが、なにせ邪気を感じぬ年端も行かない童子を邪険に扱うのも気が引ける。

「むぅ、困ったの。とりあえずわしのばあさんが今朝から居なんだ、探しにいかねばならんが……」

 流石に童子とは言え得体の知れない人物を家においておく訳にもいかない。はてどうしてものかと自らに諮詢するも、

「ワシもゆく」
「そうか、そうしてくれるか」

 童子は頭の回転が速いのか、割と即答だったのじゃ。
おじいさんはすぐさま入れた物質を保冷する符術(ホレイエンチャント)を施した大型竹籠から三人分の携帯食料セットと、「きび」を取り出し、芝刈り用の装備一式をタケカーボンナノティック製タクティカルベルトで固定する。
そして、きびを練り、それを触媒として三匹の使い魔を召喚した。それぞれケルベロス、メスゴリラ、シマエナガの姿をした凶悪な使い魔で、おばあさんの識別パターンを伝達すると使い魔達はすぐに野をかけていった。

「先程からばあさんの気配探知をしてるんじゃが全くせんからのう、どこまで行ったのか……さてわしらも出ようか」

 おじいさんは一瞬童子にも何か護身用の装備をさせようかとも思ったが、幾多の警報や罠を一切作動させず侵入してきたとしか思えない、しかし目的は不明である上に記憶喪失であると主張する見たこともない桃髪の童子に警戒を解けなかったのじゃ。
しかし童子はそんなこと気にもとめてないようじゃった。

「うむ」
「しっかりわしについてくるんじゃぞ」

 おじいさんはますます困惑したのじゃった。
さて家の周辺には山と川、少し歩けば近所に集落があるのじゃがそのどれにも探知符術(サーチエンチャント)が施されているのにもかかわらず今朝まで「人が通った痕跡」が無く不思議でならなかった。村人はおろか、おばあさんが普段通るにしても視認解除(ディスペル)して通るわけでも無いのでやけに不気味であった。
一つ気になることと言えば、流しに置いてあった、入れた獲物が無抵抗になる付術(ムテイコウエンチャント)が施された竹籠がひっくり返り、中身の桃が消えていたことじゃ。当初は桃が童子に化けた、あるいはおばあさんが童子になったのでは?という事もおじいさんは考えたがすぐにその考えは捨て去った。
なぜなら桃色童子からはおばあさんとも桃ともつかぬ、未知のエネルギー的な何かを感じ取ったからじゃ。符術でもない、妖魔が放つ妖気でもない。得体の知れない力の波動を微かに感じたのだ。それにどちらにせよバカバカしすぎる。

「恐らくばあさんの事じゃ、一人で桃を食べたく持ち出したに違いない。それでどこかで麻酔がかかってひっくり返っているはずじゃ」

 それなら視認解除(サーチディスペル)して出かける理由にもなる。それで別に桃が無くなるのはどうでもよい。問題はこの時期に外で無抵抗になる事じゃった。

「麻酔…うっ、頭が」
「具合が悪いのか?」
「大丈夫、少し頭が痛むだけじゃ」
「わしもじゃよ。季節の変わり目というのはどうも頭を悩ませる事柄が多くてな」

 少し会話を挟みながら、おじいさんは面倒な事になった、とすぐ感づいた。探知符術(サーチエンチャント)が不穏な空気を察知したからじゃ。そしてその二秒後、東の集落に向かっておった使い魔のシマエナガが慌ててチーチー言いながら飛んできた。

「こういう事になるからの」

 それがおばあさん発見の報告ではなく、妖魔発見の報告だったからじゃ。おばあさんも気になるが集落を放置する訳にもいかなんだ。おじいさんは重なるタスクに少々苛立ちを覚えながら、しかしそれを顔に出さずに集落の方へ足を向けた。
春は目覚めの季節、活動の季節でもあり、妖魔が活発になる季節でもあった。

「ふざけんじゃねぇ!!遠隔操作してんだろ!三万入れて出ねぇとか遠隔操作してんだろ!必ずハズれるようによ!遠隔操作してんだろ!店長出せや!!!」
「お客様申し訳ございません、なにゆえ機械ですから必ず出る、という事ではないものですから」

 集落にあるパチンコ店「パーラータマモ」の外で何やら揉めておった。それも一方的に。

「うるっせぇんだよ!さっきなんか『CR山物語 IN 阿蘇山』のミルクちゃんの激アツパイズリーチ演出でハズれやがってインチキ店が!!いいから上の人間出せっつってんの!!金返せ!!!」
「そうだメーン?ほら保証!詫び保証しろっメーン?」
「ガルガルー!」

巫女衣装を胸が強調されるメイド服、そして短く紅いスカート風にアレンジした制服の、白ハイソックスが似合う黒髪ロングな黒狐耳と黒尻尾の生えた若く美しい女性店員が。頭に一本の角が生え憤った見た目だけは屈強な数名の、それぞれブサイクなピンクワニ、ウシガエル、カンガルーの風貌をした、いかにもな『鬼』に囲まれておった。特にピンクワニがイキっておって、狐店員に食ってかかっておったのじゃ。

「だいたい何が『ジャンジャンバリバリ出玉出ちゃうのぉ♥いっぱい出してね♥大出血♥サービスデー』だオラァン!イベント謳ってんのに三万使ってクソも出ねぇじゃねぇかよ!!」
「ですからお客様……」
「それともなんだメーン?きつねーチャンの体にジャンジャンバリバリ出玉出しちゃってもいいのかメーン?」
「僕の阿蘇山も噴火しそうガルー!」
「そういうこったなオラァ!?本当に申し訳ないと思ってんなら!赤玉出るまでイベントすっぞ!イベントすっぞ!ほら言ってみろ!自分の口でイベント名をよぉ!『いっぱい出してね♥』ってコンコン言わせたるぞ!十ヶ月くらい血が出ねぇようにしてやるよオラァアン!」

「騒がしいのう『鬼』いさんがた」
「あぁん?んだおメェーン!?」

 鬼どもがつばを飛ばしながら振り向くと、そこにはつばが深い笹傘を被り、一見なんの変哲もない藁コートと藁ブーツを着込んだ、しかしただならぬ雰囲気を醸し出している背筋の通った掘り深い顔の老人がおったそうな。
と、その後ろに桃髪の人形のように可愛らしい童子。

「あっ、太郎さぁん♥」

 毅然として、しかし恐怖で少し引きつり気味だった狐店員の顔がほころび、垂れていた黒耳と黒尻尾がぴょこんとなったそうな。

「賭博は当たりばかりでなく外れる事もあるじゃろ。今日は運が悪かったという事で引き取りなされ」
「うるせぇ!!俺たちはこの店の詐欺にあったんだよ!!こんな格好でヒトサマの射幸心をじゃぶじゃぶ煽っといて……三万円も入れたのに全額スられたんだよ!!!」
「そうだメーン?こっちはこのきつねーチャンに化かされ、かどわかされた遠隔操作の被害者、被害者ぞメーン?」
「たかだか三万円ごときで大の男が、それもおなごに、しかも多人数で八つ当たりとは。あまりにも惨め極まりないのう」

おじいさんと童子の息のあった煽りによってピンクワニはすっかり顔真っ赤になって顔面阿蘇山になってしまったそうな。

「んだこのメスガキィ!!ジジイもろとも俺様の『ケモノオークリティカルアタック』でやっちゃうよ?やっちゃうよ!?」
「ガルガルー!」

 鬼たちは理由は情けなくとも、力だけは一人前以上であった。ワニ顔の鬼は右ストレートでぶっとばすを体現した、人間には見えぬほど高速で強烈な妖魔特有の一撃をおじいさんの顔面に叩き込んだ。

「ぐわああああーーーーッ!!」

 しかし吹き飛んだのはピンクワニのほうじゃった。見ると何故か吹き飛んだ鬼の顔面が思い切り殴られたかのように凹んで、そしてぶっ飛び気絶しおった。

「あ、アリゲイ~~~ン!アリゲインしっかりしろメーン!はっ!?こ、こりゃまさか…そんな!第六位符術(だいろくいエンチャント)『物理反射(リフレクション)』……『物理反射(リフレクション)』メーン…?受けるはずのダメージを反射し相手に与える…攻撃側が強ければ強いほど、そして防御側が柔ければ柔いほど、その威力は格段にあがる攻防一体の符術…!この辺の、しかも人間にそんな高等な符術を扱えるヤツがいるなんて…!あわわわ話が違うメーン!」
「ガルガルー!」

 十分解説したあとに、残りのカエル鬼とカンガルー鬼は、気絶したワニを置いて急いで尻尾を巻いて逃げ帰ったそうな。

「お帰り下さいませー♥」

 その後姿に狐店員がにこやかに右手の人差し指と小指を立て、中指と薬指、親指を合わせてキツネサインを作ってふりふりした。

「無事じゃったか」
「あーん、葛音(くずね)怖かったですぅー♥ふげっ」

 葛音、と名乗る黒髪の狐娘はおじいさんに抱きつこうとするも顔を手で静止されてしまう。

「でもでもぉ、やっぱり太郎さんは葛音の王子様だってはっきり分かるんですね♥だって葛音が『助けて太郎さーん!』って思ったら来てくれたんですもの♥」
「なに、使い魔(こやつ)が教えてくれたのでな、無事で何よりじゃ」

 おじいさんはシマエナガを見せチーチー言わせながらそれとなく話の軌道修正しておったが、本当は集落に張り巡らせてある探知符術(サーチエンチャント)で集落に発生した『鬼』を使い魔よりも早く察知していた。じゃが、探知符術の事はプライバシーの侵害だのゴチャゴチャ言われないように、集落でも長クラスの者しか知っておらんのじゃった。

「おい、じいさん。この者達はなんじゃ」

 桃髪の童子が不機嫌そうに葛音やピンクワニを見やる。

「あら、こど…も?太郎さんのお孫さんですか?きゃあかわいい~!」
「うおっ、く…くっつくでない!やめんか!じいさん!この者達はなんなのじゃと聞いておる!」

 おじいさん的にはまずお前がなんなのじゃと言いたい気分ではあった。

「あっ、ごめんねお嬢ちゃん、まずは初めましてだもんね。私は葛音っていうのよ、よろしくね」
「この娘さんは妖狐といってな。妖狐は化獣(ばけもの)の一族でこの集落の者たちと仲良うやってる妖魔たちなんじゃが……その表情では本当に知らんようじゃな」

 光あるところに影はあり。人が繁栄し生きる世の中の反対側には人ならざるもの、自然の根源「妖魔」と呼ばれる異形の存在がおった。
人が生きとし生けるもの、自然を食らい生活する反対側で、自然そのものである妖魔は人を食らうことでその存在を確立しておった。
しかし妖魔が人を食らう、と一言に言うても妖魔にもそれこそ多様な存在がおり、人の活動するエネルギーをほんの少し食らうだけで満足できる妖魔、例えば夢を食らう妖魔など被害の差こそあれども人に微小な影響を与えるだけのものから、それこそ直接体や命を食らう危険な妖魔もおったそうな。
そして化獣の一族は動物が人に近い姿を取る「変化」と呼ばれる彼ら特有の妖術を使い、人の生活圏内で共存する事を選んだ一族であり、人を食らう内容についても、直接危害を加える事はない。せいぜい余剰エネルギーを食らうくらいであった。

「ちなみに私達妖狐は、人のワクワクする『期待』とかそういうプラスの感情を頂いてまぁす♥」
「だからこのような賭博場でそのような破廉恥な格好を……ゲスの極みイナリじゃな」
「あっ、ひどいなぁーその分ちゃあんとお客様にも色々還元してますからっ …胴元が儲かる程度にね」
「そういう話はせんでよいわ」

 そう言うと桃髪童子はぷいと横を向く。どうやら葛音が気に入らん様子。

「あららごめんね、難しいお話だったね。それで、お嬢ちゃんのお名前はなんていうのかな?」
「誰がお嬢ちゃんじゃ子供扱いするでない!ワシは……」
「葛音さん、実はじゃの。この童子は記憶喪失でな、今朝わしの家の中で倒れておって名前も思い出せんのじゃ」
「えっ?倒れ…太郎さんのお孫さん、ではないんですか?よかった…♥なぁんだそういうことだったんですかぁびっくりしましたよーもー」
「おい女狐なんじゃその『よかった…♥』というのは」
「さらにわしのばあさんが今朝から入れ替わるように行方不明なんじゃ」
「えぇーっ、おばあさんが?昨日もお店に来てらっしゃったのにぃ?」
「また来ておったのか」
「はい」

 桃色童子は急におとなしくなった。

「…まぁよい。それで頼みがあるのだが」
「あ、分かりましたよぉ…葛音分かっちゃいました、『おばあさん』が来たら太郎さんにお伝えすればよろしいんですね?」
「すまぬな、そうしてもらえるか」
「おまかせ下さいっ」

 そうしてキツネサインと尻尾をふりふりしている葛音に見送られながら、おじいさんと桃色童子はパーラータマモを後にした。
離れる際に桃色童子はふと未だ顔面がまるで浮世絵のように凹み気絶しているピンクワニを見やると、不思議な光に包まれ、その姿は青年の、無精髭のモヤシと変わっていった。そして額に先程まであった一本の角がない事に気づく。

「じいさんや、そういえば『鬼』とか言っておったが」
「なんじゃ、さっきのか。確かにあれは『鬼』ではあったのじゃが」
「『鬼』とはなんじゃ?」
「そうじゃな、そこからか」

 人でも、妖魔でもない存在。それが『鬼』と呼ばれるものじゃった。人や妖魔には心があった。じゃが心の隙間。生きていれば誰もが少なからずとも開く隙間があった。
『鬼』はその心の隙間に潜り込み、心の持ち主のあらゆる力を増幅する。そこだけならまだしも負の感情をも増幅させるため、有り余った力は破滅的願望、隠すべき欲望、異様な凶暴性と共に周囲に向けられ、他者の全てに対して攻撃的になる。
そしてその際の負の過剰エネルギーが表層に現れたものが「角」であり、『鬼化』した全てのものは、額に大小様々な角が生えていることが特徴であるといわれておったそうな。中でも人間が『鬼化』した場合、異形の姿になると言われており実際先程のワニの『鬼』は人間が『鬼化』したものじゃった。

「しかし『鬼』は『退治』して懲らしめてやれば体から抜けてゆく。じゃから先程の若者も『鬼』ではのうなった。と言うことじゃ」
「なるほどのう、彼奴らはパチンコで三万程度負けた事がきっかけだったんじゃな」
「そういう事じゃの。先週も『鬼』が出たばかりじゃが……この季節は特に多いものじゃて」

 桃髪童子はならばパチンコが無くなれば、と思ったがすぐにその考えを改めた。妖狐たちにも生活があるだろうし、それに人々の娯楽を無くせばそのはけ口はどこに向かうか…想像に難くなかった。おそらくおじいさんに訪ねても似たような答えが返ってくるじゃろうと思ったのじゃ。
その一瞬の自己問答を見たおじいさんは、やはりこの童子は普通ではないと確信した。

「所でじいさんや、先程『鬼』は三人いたようじゃが」
「良い所に気がついておるな。今『逃した』鬼の痕跡を辿っておるところじゃ」
「『逃した』、というのはどういうことじゃ」
「わざと泳がせたのじゃよ。先程集落には正確には四人、『鬼』が出現しておった。じゃがその内の一人はすぐさま己の気配を消しおった」

 厄介な事に『鬼』は群れる習性がある。自我もある『鬼』がどうして集まるのかは理由は本人たちにも分かってないらしいが、恐らく『退治』されるのを防ぐためなのか無意識の内に一箇所に集まるのだ。その時決まってより強い『鬼』の元へ集まるということじゃ。

「つまり辿っていけば、気配を消した強く賢い『鬼』の元へ行けるということじゃな」
「そういうことじゃ」

 そうしておじいさんたちは、集落のはずれにあるちょっとした岩場へと向かうのじゃった。




はい。大昔にチマチマ書いてた短編クソ小説なんですが飽きたので公開しました。
この後どうなるんでしょうね?

めでたし、めでたし。
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